-与那原通(よなばるつう)-

与那原で多くの建築家と建築ファンが訪れる場所といえば…

2011年5月7日(土)

今はどっぷりと(?)与那原にはまっているわたしですが、その昔、はじめて与那原を訪れた時には、なにもかもが新鮮でした。そして、その時、とっても気になる建物を見つけました。それは、与那原警察署の奥の高台に見える十字架マークのある建物。

 

すっかり月日を経た今になって、あの時に受けた印象を具体的に言葉にすることは難しいのですが、その独特の美しいたたずまいに非常に強く心を動かされたことはしっかりと覚えています。わたしは、その後、近くを通るたびに、その気になる建物を下から見上げたものでした。

 

与那原警察署の奥の高台に見える十字架マークのある建物

▲その建物は国道329号を那覇方面に向い、与那原交差点近くになると、ちょうど正面にその姿を現す

 

その建物が「聖クララ教会(与那原カトリック教会)」だというのを知ったのは、それから数ヶ月ぐらい後のことだったでしょうか? 偶然、ある建築家の方が紹介している文章を目にし、非常に歴史のある教会であること、「日本近代建築DOCOMOMO100選」に選ばれているということを知りました。

わたしは「やっぱりね。ただの建物ではないと思ってた〜」とひとりごちたものです(笑)。

 

 

ちなみに、「日本近代建築DOCOMOMO100選」とは、国際組織「DOCOMOMO Japan」が、2003年9月に日本を代表する近代建築として選定した100件の建築のこと。Wikipediaによれば、その後、さらに50件の建築物が追加され、現在は「DOCOMOMO150選」となっているようです。(DOCOMOMO Japanのwebサイトでは、まだ145件分しか紹介されていませんが。)

100選中、沖縄からは055番目に「聖クララ教会」が、125選中では、121番目に「那覇市民会館」が選ばれています。

◯DOCOMOMO Japan→ http://www.docomomojapan.com/

 

 

さて、今回、わたしはついにこの「聖クララ教会」を見学することができました。最初に見かけたときから5年以上経って、ようやく実現したわけです。

 

聖クララ修道院入口

▲「聖クララ修道院」の名前が掲げられた入口

 

中にはいると、敷地内は思っていたよりは広く、今回、見学させてもらった「聖クララ教会」以外に、「与那原第一修道院」、「与那原第二修道院」、「クララ修道院」が併設していました。さらに、下の方には「クララ幼稚園」もあります。

 

教会エントランス1
教会エントランス2

▲手入れが行き届いたエントランス(上・左下)とエントラスホールから見える回廊(右下)

 

エントランスまわりは、見るからにきちんと手入れされていて、とてもきれい。左手の入口から中に入ると、中は小さなホールになっていて、左右にドアがありました。聖堂の方へ行く左の方のドアをくぐると、そこはまるで別世界。目の前に教会と小さな中庭が広がりました。

 

中庭と教会

▲中庭と教会の聖堂

 

実際に現場を見た感覚からすると、中庭を含むスペースは、写真(上)よりも、もっとこじんまりとした印象。そのほどよいスペース感と美しい芝のグリーンが訪れた人を優しく迎えてくれます。

 

 

中庭を取り囲む回廊

▲エントランスから修道院と聖堂をつなぐ回廊

 

中庭のまわりには、庭を取り囲むように回廊が巡らされています。その一部には、風通しのよい花ブロックが仕切りとして使われていて、沖縄らしさが漂っていました。そこから少し上がったところに聖堂入口があります。

 

聖堂入口

▲聖堂受付スペース(左)とそこから覗く聖堂内部(右)

 

 

聖堂の中に入ると、その独特の雰囲気に、わたしはつい「懐かしい〜」とつぶやいてしまいました。

 

実は、わたしは幼い頃、長崎に住んでいたことがあって、その時通っていたのがカソリック幼稚園だったのです。幼稚園では、毎日、お祈りをしていました。普通はそれぞれの教室内で行っていましたが、時々、教会の中でのお祈りもありました。中の雰囲気がその時の記憶を呼び覚まし、なんだかとても懐かしかったのです。

 

聖堂内部

▲内部の様子

 

聖堂内部は、わたしが通っていた幼稚園のものや、長崎で訪れた他のカトリック教会(建てられた時代も建築様式も規模も違いますが)の「大浦天主堂」、「浦上天主堂」などと比べると、開放感があって明るい感じ。そして、どこか南国的な香りがします。それはやはり、着色ガラス(ステンドグラス?)が散りばめられた北側一面の開口部とそこから降り注ぐ光からくるのでしょう。

 

北側一面の開口部

▲北側一面の開口部

 

この開口部からは与那原の町並みを一望することができます。眼下には国道329号がまっすぐに延び、車が行き交っているのが見えました。そして、その左右に広がる町並み。いつも見慣れた光景ですが、この角度から見るのははじめて。しばらく、見とれてしまいました。

 

与那原の町並み

▲高台の教会から見える光景

 

 

教会は1958年に竣工。設計者は京都出身の片岡献氏。そして、現在、アメリカ合衆国最大級の建築設計事務所となっている「スキッドモア・オーウィングズ・アンド・メリル( SOM)」が建築を指導したといわれています。

 

1958年というと、今から50年以上も前の建物ということになりますが、どうやら2009年に改装工事を行っているようで、わたしが見た限りでは、特に目立つような老朽箇所は目につきませんでした。それよりも、手入れが行き届いていて、大事に使われているという感じがしました。

 

見学後、与那原出身で「クララ幼稚園」にも通っていたという泉設計の當間卓さんにお話を伺う機会があったのですが、実はこの「聖クララ教会」は、長い間、設計者が誰なのかはっきりしなかったのだそうです。そして、当時、教会を建てた(施工した)のは、信者さんたち自らだったのだとか! 驚きました。

◯株式会社 泉設計→
http://www.izmarc.co.jp/

 

中庭と回廊

▲回廊に彩りを添えるさまざまな鉢植え

 

聖堂を出て、回廊に戻ると、最初に見学の許可をいただいたシスターにまた会いました。お礼をいうと、優しく微笑みながら、わたしに話かけてきました。

「どちらからいらっしゃいましたか?」

たぶん、日本各地から建築家や建築ファンが多数訪れているので、もてなしの意味もこめて聞いてくださったのでしょう。

 

わたしは「遠方からの見学者ではないので少しがっかりさせちゃうかな?」と思いつつも、地元からだということ、ずっと長い間、ここを見学したいと思っていたことなどを伝えました。その後、さらに教会の建築について、いろいろと聞いておくべきか一瞬迷いました。でも、もう嫌というほど何度も同じ質問をされているに違いないし、わたしは建築のプロというわけではないので、それは止めにして、気になった庭の植物の話をしました。

 

 

こうして、念願かなって、ようやく訪れることのできた「聖クララ教会」。

 

そこは予想通りに素敵な場所でした。モダニズム建築としての教会のデザインの素晴らしさはもちろんのことですが、そこを取り囲む清々しい雰囲気と多くの人に愛され、大事にされている様子が非常に印象的で心に残りました。そして、与那原にこんな素敵な建築物が存在することを、改めてうれしく思ったのでした。^^

 

※教会の見学は、関係者にお願いすれば、基本的に快く許可してもらえると思います。ただし、祈りのための場所だということはくれぐれも忘れないように。大勢で押しかけたり、中で騒いだりなどせず、マナーを守りましょうね。そして、感謝の気持ちもお忘れなく!(^_~ 

 

 

【2011年5月16日追記】

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この「聖クララ教会」が名誉ある「日本近代建築DOCOMOMO100選」に選ばれるきっかけとなったエピソードが判明したので、追記しておきます。

 

この教会を「DOCOMOMO japan」に一番最初に推薦したのは「パス建築研究室」の塩真孝彰さんでした。なんでも、2000年に沖縄県建築士会の広報誌で記録に残したい沖縄の建築の特集を組んだことがあり、その時、いくつか取り上げた建物の中のひとつが「聖クララ教会」だったそうです。

その後、「DOCOMOMO japan」が100選の選出のために、全国の「DOCOMOMO japan」メンバーに日本近代建築のリストアップの依頼をした際、沖縄の会員である塩真さんが、「仲間郁代建築設計事務所」の仲間さんと共に必要なデータを収集し、「聖クララ教会」、「那覇市民会館」、「久茂地公民館」を推薦したそうです。その結果、2003年の100選の中に与那原の「聖クララ教会」が選出されたというわけです。

◯パス建築研究室→ http://ts-pas.com/

◯仲間郁代建築設計事務所→ http://www.ikuyo-nakama.jp/

 

写真・文 fuu

 

聖クララ教会外観

  • 聖クララ教会(与那原カトリック教会)
  • 住所:沖縄県与那原町与那原3090番地4号
  • ミサ:日曜日 9時
  •    平日 6時半(金曜日のみ19時も有)
  •    祝祭日 7時
  • (※ミサに関しては、2011年4月現在の情報)